当菜園では緑肥を活用した土つくりを行っている。
もっとも緑肥による土つくりは一朝一夕にいかないので5~10年のスパンでその効果を測定することになる。
そもそもなぜ緑肥による土つくりを行うことになったのか、そこから説明しよう。
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当菜園は、もともとは資材・廃材置き場であり、その土地を安く譲り受けた地主さんが破格の値段で貸してくれたことで始まった。借りた当初は、いわゆる駆除が難しい雑草さんがはびこる土地で、周期的に地主さんが雑草駆除のためにトラクターで耕していたくらい。だから野菜を育てるためには、それ相当の準備が必要だった。
まずは地中に隠れていた廃材を取り除くことから始めた。
スコップで掘ればいろんなものが見つかる。レンガ、カーブミラー、旅行カバン。マネキン(首だけ)、鉄筋、塩ビ管、等々。いろんなものが出てきたが、お金だけは出てこなかった。
スコップは地際から30cm以下には入らなかった。そう、硬盤が存在していた。
またスギナやカヤツリグサなどの駆除が難しい雑草が多く、とてもじゃないけれど野菜など育てられるような土質ではなかった。少なくとも自分にはそう思えた。
いろいろ試した。
酸性土壌だから雑草さんが多いのだろうと思い、思い切ってアルカリ性土壌にしてみた。それも大量の石灰が必要だった。
野菜が育つ土にしたかったので腐葉土や堆肥を、年間10万円近い予算をとって、投入した。野菜の教本にのっているようなことは全て試してみたが、なかなか土は改善しなかった。
そんな中で起こったのが東日本大震災だった。この震災をきっかけに腐葉土や堆肥の価格が高騰した。震災発生と前後して、市販されている動物性堆肥や腐葉土に代わる有機物素材を探していた。そのとき発見したのが緑肥だった。
当菜園、緑肥ですらまともに育たなかったのだ。それくらい土が痩せていた。
ベッチは自ら窒素を供給するし、エンバクはイネ科特有の悪食だからとにかく肥料分ならなんでもいいという緑肥。
ということは両方を共生させることでエンバクも育つし、ベッチも育つのではないかと考えた。
野菜を播種・定植しつつ、エンバクとベッチを播種する。最初は野菜はまともに育たないが緑肥は育つようになった。その緑肥を土に鋤きこむ。
当菜園は春夏野菜と秋冬野菜を栽培するエリアを完全に分割しているから、春夏野菜を栽培する頃、秋冬エリアでは緑肥が育っている。逆に秋冬野菜を栽培する頃には春夏エリアで緑肥。
このようにして緑肥を育てては鋤き込み、を繰り返して今日に至っている。
土質を良化させるとともに硬盤層を破砕するための緑肥も採用した。
基本はエンバクで粗大有機物を確保し、ベッチやクリムソンクローバーを用いて土に活力を与え、ソルゴーでマルチングしながら表層から腐植を作り、セスバニアを使って硬盤層を破砕させつつ、窒素分を供給させる。これが当菜園の緑肥利用の基本だ。もっともクリムソンは景観用にもなっているのだが・・・。
このような過程を経て緑肥による土つくりを行うようになった。緑肥が腐植を作り出す過程で微生物が活性化し、土そのものが健康になる。動物性堆肥に頼ることなく、自然に近い形で野菜が育てられる。害虫もつかず農薬も不要。味の濃い野菜。
しかしながらまだまだ土が完全ではないし、ゴールはないのだろう。試行錯誤は続くのだ。
ちなみに文中に登場したソルゴーは夏場に使用する緑肥。ドリフトガード(農薬飛散防止)とか地中の塩類除去に使われる緑肥だ。
初期成育はかなり遅め。肥料と水が大好き。
ある程度の大きさで切ると、ふたたび根元から復活祭が始まる(笑)
サトイモのマルチ代わりなど夏野菜のマルチングにも使え、しかも表層から腐熟していってくれるから土も肥える。放っておけばそのまま朽ちて、ミミズの宝庫になる優れものだ。
ただ、播種後、しっかりと鎮圧したい。そうでないと、鳥にタネを食べられてしまうからだ。
小規模農園だと使いにくい緑肥だが、それでも草丈100cmくらいまで育ててからカットし、マルチングや土に鋤きこんで、というような使い方が出来ると思う。