「こんにゃくってもともとはイモなんだぜ」
「え? マジで?」
「こんにゃくは群馬県とか有名だけれど、このへんでも栽培している人はいるよ」
「マジかー」
「でもこんにゃくって育てるのに3年くらいかけるから家庭菜園向きではないな」
「そだねー」
「なに、イモって知らなかったのか?」
「そう、知らんかった」
「イモじゃないけど、レンコンとか収穫に手間がかかる野菜は高価なのに、こんにゃくはさほど高価じゃないよね?」
「やっぱ手間隙が市場価格に反映するの?」
「そりゃそうさ。だからサトイモだって高価じゃん」
「そういえばそうだね」
「でも、いきなりどうしてこんにゃくのハナシ?」
「いやいや、近所の農家さんの畑に、今年はこんにゃくが見られないなぁと思って」
「あ、そうなの?」
「いつもだったらそろそろ見かけるのに、と思ったんだ」
「それはそうと、放棄されている田んぼもちらほら見かけるし」
「あぁ~、あそこん家ね」
「これからそういう耕作放棄地がどんどん増えてくるんだろうね」
「だから田んぼつぶしてアパート建てる人、多いんじゃない?」
「いいねー、家賃収入で生活してみたいわ」
「せやなー」
「そうそう、サトイモの様子を見に行こうと思うんだけれど」
「行こう、行こう」
「サトイモの芽、1つしか出てないじゃん」
「いやいや、これからだ」
「周囲に生えてるのは雑草?」
「いや、緑肥。ソルゴー」
「サルコー?」
「それ、フィギュアの技だから」
「あぁ、あのいい年のオヤジがライフル持ってるやつ?」
「それ、ゴルゴ」
「一応、芽が出てるから今年もサトイモになりそうなのかな?」
「そう願いたいね」
「土ん中にイモができるんでしょ? 掘りだして収穫するってこと?」
「そう。これが意外としんどい作業でさ、だから価格が高いんだ」
「これはなぁに?」
「これがソルゴーだよ。ソルゴーは発芽してしばらくしてもなかなか大きくならないんだ。初期成育が遅いのよ」
「遅咲きってやつだ」
「そだねー」
「でも、どうしてソルゴーなんて播いたの?」
「サトイモは高温多湿が好きで、乾燥に弱いから株元にマルチングする必要があるんだよね。だからソルゴーがある程度大きくなったら刈り取ってマルチ代わりにするんだよ」
「なるへそねー」
「でもソルゴーは肥料喰いで、サトイモも肥料喰いだから、肥料の共食いの可能性があるんだよ。だからバンバン肥料をあげないといけないんだ」
「なかなか全てがうまくいかないんだね」
「でもね、サトイモは肥料喰いだけれど、あまり肥料を与えすぎると害虫がびっちり付くんだ」
「害虫って、イモムシ?」
「そう、イモムシ。例年、イモムシをひっ捕らえては道路に投げる。そうすると運がよければカラスに拾われ、運が悪ければ車に轢かれるんだ」
「どっちもどっちじゃん」