総務とか人事とかの領域で活躍される方には馴染みの深い用語だと思うが、経営組織の運営に大事な概念の一つに「モチベーション」というものがある。
モチベーションの定義は、そういうことに詳しい方にお任せしたいと思うが、ここでは一旦、「何か目標とするものがあって、それに向けて行動しようとし、方向性を定め、維持する力」のことだと定義しよう。この際、この定義があっているかどうかなどは気にしない。
このモチベーションとかいう概念は、人それぞれにモチベーションを向上させる要因やプロセスが異なることが知られている。それゆえその時の人らによって様々な研究なされることになったわけだが、その代表的なものに、
・マズローの欲求5段階説
・アルダファーのERG理論
・マクレランドの達成動機説
・アージリスの未成熟=成熟理論
・マグレガーのX理論とY理論
・ハーズバーグの2要因論
・ブルームの期待理論
といったものがある。
要するに人は何によって動機付けされるかということを追究するものであり正解はない。万人が同一の動機付けができるとしたらそれは洗脳である。戦時中の日本陸軍が研究していたと言われている。嘘か本当かはわからない。
この日の早朝、2020シーズンで初めての落ち葉拾いをしながら考えていたことが、このモチベーション理論だった。
自分はなぜ落ち葉を拾っているのか、しかも早朝に。
そう駆り立てるものは何なのか。
つまり、早朝に落ち葉を拾うという行動を維持する力は何だろう、と思ったのだ。
朝日が登り始めた頃なので、本当に早朝。確か6時を少し回った頃だったと記憶。
気持ちの良い朝だ。
いつもの公園にはまぁまぁな量の落葉があった。これは是非とも集めておきたい。これは宝の山なのだから。
この時期に落葉するのは、この公園で言えば、ケヤキであり葉も薄くて小さいことから分解が早い。クヌギとは異なるタイミングで分解されると思うので分解のタイミングが異なる葉を集めることは我が菜園にとっては有益なことだと考えている。
例によって、落ち葉を数カ所に集約する。
むろん拾いやすくするためだ。
量的には10袋くらい拾えるかな。
こうやって落ち葉を拾いながら、とりとめのないことを考えたり日本経済のことを考えたり。そんな中でふと頭に浮かんだのが先ほどの「なぜ落ち葉を拾っているのか」「何が落ち葉拾いに駆り立てるのか」であった。
今回はケヤキなので葉が小さい。それに持参したポリ袋も45リットルサイズで小さいものなのでそんなに拾えないかもしれないな。
せっせと集めること、数分。まずは一つ目のヤマの攻略に成功した。
成果は5袋だった。ひとまずは順調だな。
続いて2つ目のヤマに取り掛かった。
そもそも落ち葉拾いの目的は腐葉土や落ち葉堆肥を内製するためだ。内製するということは自ら作製することであって購入したり作製させたりすることとは違うのだ。だから材料を自分で集めるという行為は、この内製するという行為とは別問題なのではないかと思ったわけだ。
だから、こんな早朝に落ち葉を集めようというモチベーションはどっからきているのだろうと不思議に思ったのだ。
(せっせ、せっせ)
(せっせ、せっせ)
(せっせ、せっせ)
(せっせ、せっせ)
ハーズバーグの2要因論によれば、動機付け要因と衛生要因という2つがあり、それらは逆方向に動くという性質があるとしている。
衛生要因とは「なければ不満を持ち、あっても満足に至ることのない欲求」のことであり、給料とかの待遇面、労働環境や人間関係をさすことが多い。つまり、これらは満足することがないために不満をもたらす要因である、としたのがハーズバーグだ。
一方で、動機付け要因とは「達成感や仕事への責任」などであり、これらは人を満足させる要因である、とした。
そんなことを考えながら、思った。
自分は動機付け要因によって落ち葉を拾っているな、と。これに衛生要因が加わるとどうなるのかな? お駄賃をあげるから落ち葉を拾ってよ、となるとどうなるかな?
(せっせ、せっせ)
(せっせ、せっせ)
(せっせ、せっせ)
二つ目の山が終わった。
あ、想定以上に集めることができたな。
今日の収穫。
これらは早速菜園に持ち込まれた。
む?
ひょっとしたら今年はあまり集められないかもしれない。
すでに完成している堆肥や腐葉土を消費してやらないと落ち葉を積み上げるスペースがないな。
***
この公園は公共の施設で、公共の施設だからこそ落ち葉を拾うことができる。時には役所の人に感謝されることもある。
今、落ち葉拾いという作業環境やそれに伴う報酬をもらったとしても自分の満足度は上がらない。少なくとも自分は人に何か言われてやらされることが嫌いなので。